No.81 ジャワとスマトラのコピルアク Vol.3

オランダのインドネシア植民地統治とコピルアク

 

1.コーヒーが副業のMuria山のコーヒー農家

 

前回のブログの話の続きですが、中部ジャワのコピルアク産地のMuria山のKelet地区と、近所のコーヒーの味はまったく異なるのに、なぜ遠く離れたスマトラ島のLampung(ランプン)地区の豆の味は、ほぼ同じなのか?という話題に戻りたいと思います。

Keletのコーヒーというのは、コーヒーを栽培している人々の本業がコメ農家であり、コーヒーはあくまでも副業としての位置づけです。そのため昔から今に至るまで全くと言っていいほど手入れがされていません。手入れとは農薬、肥料を与えること、そして「接ぎ木」です。特に接ぎ木はいわゆる種のハイブリッド化を促すものであり、良質な幹と枝を交配合をさせることです。そのため何代にもわたり接ぎ木をされた豆というのは、当初のそれとは全く異なります。もちろん味は洗練されたものになるでしょう。

 

2.原点の味を失う配合の繰り返し

 

しかしながら交配合を繰り返してしまえば、その木はもう元の木に戻ることは出来ません。つまり、そのコーヒーが持っていた原点の味が出なくなってしまうのです。Kelet以外の近隣のコーヒー農家は、コーヒーが専業です。そのため接ぎ木を繰り返して、良質なコーヒーを作るよう日々努力しています。それにより、味も微妙に変わってゆき、それを繰り返すと数十年かけて元の味とは大きく異なるコーヒーが出来上がるのでしょう。

おそらくKeletと味が同じLampungのサンプルを取り寄せた地区というのは、コーヒーは副業で専業は別にあったのかもしれません。味が同じということは接ぎ木や受粉による品種改良をしておらず、おそらくオランダが数百年前に植林した当時のままのコーヒーであるということを意味しているかと思います。

 

3.欧州向けのKeletコーヒーの純朴な味

 

このKeletのコーヒーですが、実は欧州向けに少量ですが出荷されているそうです。毎年決まったバイヤーが買い付けをして東ジャワ州の州都スラバヤに運び、シンガポール経由で欧州各地に販売するということでした。なぜ彼らがこのKeletの豆を好むのかというとそれは「味が洗練されていないこと」だそうです。

確かにスマトラのマンデリンやスラウェシのトラジャなどは世界的に有名なブランドで、味は品評会でもトップクラスの位置づけです。ところがこういった豆があまり好きではない天邪鬼(あまのじゃく)もヨーロッパにはいるそうで、純朴な味を持ち見た目も悪いKelet近郊の豆を指定買いするのです。

 

4.インドネシアのコーヒー産業の厳しい状況

 

昨今コーヒーの相場は高くなる一方です。世界最大のコーヒー供給国であるブラジルの、病気による生産量低下が一因ではあるのでしょうが、需要が増えているという理由もあるように思います。そのためインドネシアのコーヒーは輸出に回される傾向がこれから強くなり、国内需要は安いベトナムから輸入するという流れになってくるかと思われます。

Keletでコーヒーを副業で栽培している農家が、コーヒービジネスに目覚めてしまい、ハイブリッドをはじめれば、私としては複雑な気持ちです。自由主義経済の中彼らの行動は正しいのでしょうが、あの素朴なオランダ植民時代から変わらない味がもう楽しめなくなると考えただけでも、誠に残念でなりません。こうなったら、Muria山を買い占めたくなりそうですが、それは無理話ですからね。

 

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